
重度知的障害児の「ぼんちょ」は2歳から靴の着脱に取り組んでいますが、小学生になるまではほとんど全介助でした。
自分で靴の着脱(脱ぎ履き)ができるようになるまでの環境設定のポイントや練習方法をブログにまとめます。
靴の着脱は身辺自立の中でも毎日取り組みやすいことの1つです。ですが、重度知的障害児のぼんちょは意外と長い期間、悪戦苦闘しました。今回は重度知的障害児ぼんちょの経験をもとに、靴の着脱ができるようになるまでの大事なポイントを紹介します。
子どもが靴を着脱するための必須条件は?

知的障害や発達障害の子ども(だけでなくどの子にとっても)が靴を着脱(脱ぎ履き)するため必須条件が3つあります。
- 手の指で物をつまめたり足を上げたりなど身体的に靴を履ける段階まで育っていること
- 本人にとって脱ぎ履きしやすい靴であること
- 本人にとって靴の着脱に集中できる環境であること
靴の着脱ができるようになるには、この3つの条件が必要です。
もしもお子さんが、身体的に靴を履ける段階にない場合は、成長を待つか作業療法や療育で手先や足を使う訓練が必要になってきます。
今回は、身体的に靴を履ける段階にはあるのに、靴の着脱がうまくいかない場合に焦点を当てて説明していきます。
子どもが靴の着脱がうまくいかない時に考えてほしいこと3つ
靴の着脱が上手くいかない理由としては、次の理由が考えられます。
これらの理由から、お子さんがなかなか靴を自分で履いたり脱いだりできない時に考えてほしいことが3つあります。
順番に説明します。
子どもが着脱しやすいのはどんな靴?:おすすめの靴とアイテムも紹介
子どもが靴の着脱を練習する前に、本人にとって着脱しやすい靴を用意する必要があります。
子ども本人にとって履きやすい靴は次のような靴です。
- サイズが合っている
- 足を入れる部分がガバッと開く
- マジックテープ
- 靴の後ろにタブが付いている
子どもの足のサイズの測り方についてはMoonstarの公式サイトが参考になりますので見てみてくださいね。
足のサイズ測定の用紙を自宅でダウンロードして使用することができます。
ですがじっとするのが難しいお子さんの場合、紙では測りにくいかもしれません。
その場合、最近ではダイソーにも20cmまで計れるフットメジャーが売られています。
家族みんなで使えるフットメジャーとしては、こちらがおすすめです。
子どもが脱ぎ履きしやすい靴を探すときの必要条件は次のとおりです。
「足を入れる部分がガバッと開く」
「マジックテープ」
この必須条件を踏まえて、ぼんちょが色々試してみて一番おすすめできるスニーカーと上靴をご紹介します。
重度知的障害児ぼんちょがずっと履いているムーンスターのキャロットは、程よく柔らかくてガバッと開きやすくて脱ぎ履きしやすそうです。障害がある子や手先が不器用なお子さんにもおすすめできます。
上靴も色々試しましたが、ムーンスターのこちらのタイプで脱ぎ履きできるようになりました。こちらも障害がある子や手先が不器用なお子さんにもおすすめできる上靴です。
上靴はどの商品もなんとなく硬くて履きにくいイメージがあるのですが、こちらの上靴は本当にガバッと開きます。
ぼんちょが脱ぎ履きしてるのを見てもやりやすそうです。
これらの靴の後ろにはタグがついています。タグ付きの靴がおすすめです。
なぜタグがついている靴がおすすめかというと、履く時に引っ張りやすいからです。
通っている園によっては、このタグにさらに「紐」や「リング」をつけるように言われます。
最近はダイソーにもこんなリングが売られています。

こちら、パンダの部分は色んなバージョンがあるのですが、はっきり言うと不器用なお子さんに最初に使うリングとしてはこちらの商品はおすすめしません。(でも履くのが上手くなってきた時にリングを外す前の段階として使うなら可愛いしおすすめ!)
ぼんちょも最初使用していましたが、リングが小さすぎてつまみにくいです。
また、足と一緒に靴の中に入ってしまってかえって履きにくくなりました・・・
そこで、ぼんちょの靴にはこちらを付けました!

こちらはダイソーで入手したプラスチックのカードリングです。リングが大きいため手でつまみやすく、靴を履く助けになっていると実感できます。
もしリングをつけることを検討される場合は参考にしてみてくださいね。
もしお子さんが特別支援学校に入学予定で、他にも学校の持ち物の工夫が知りたい場合はこちらの記事がおすすめです↓
子どもが靴を着脱しやすいのはどんな環境?:場所やタイミング
子どもが靴の着脱を練習する前に、本人にとって集中できる環境を用意することが大事です。
本人にとって靴の着脱に取り組みやすい環境を探るときに考えることリストにしてみます。
- 視覚的・聴覚的に気が散るものがないか
- 「椅子に座って」or「床に座って」ではどちらが着脱しやすいか
- 前の活動から靴を履くモードに切り替わっているかどうか
ぼんちょの場合は次の環境が靴の脱ぎ履きに適していました。
- 外よりも室内
- 床や低い段差に座ってだと着脱しやすい
- 次に楽しみな活動が設定してある
重度知的障害児ぼんちょが靴を着脱できるまでのお話
ぼんちょにとって靴の着脱がうまくいかない一番の要因は「気が散って靴が目に入らないこと」でした。いつも外の靴箱付近の椅子に座って練習していました。しかし、なかなか靴を履くことに集中できません。
小学生になって放課後等デイサービスに通い始めました。そこでは、室内にプレイエリアが設定してありました。そこで遊ぶには靴を抜ぐ必要がありました。
すると、なんと靴に注目できなかったぼんちょ自分から上靴を脱ぐように!
そしてプレイエリアから出て上靴を履く時も、自分から足を入れようとするようになりました。
このことから、ぼんちょにとって靴の着脱がしやすい状況を次のように考えました。
・外よりも室内の方が気が散らずに集中できるのでは?
・椅子よりも床に座る方がかかとに手が届きやすくて靴を脱ぎやすいのでは?
・靴の着脱の後には「プレイエリアで遊べる」「移動してどこかに行ける」「外に出られる」など本人にとって好きな活動があると、そのために靴の着脱を頑張れるのでは?
このように靴の着脱がしやすい状況を仮定して、環境設定した靴の着脱の練習機会を増やしました。
すると、2歳からずっと全介助だった靴の着脱が、7歳では少しの介助と本人の力でできるようになりました。
このように、自分で靴の着脱ができるようになるまでには、本人にとって一番靴の着脱に集中しやすい場所や自然に着脱したくなるタイミングを考えることがとても大事です。
靴の着脱では手順を小分けにしてスモールステップで練習する
それぞれの手順をわかりやすくしてスモールステップで練習していくことで靴の着脱ができるようになっていきます。
靴を履く手順を表してみます。
- 座る
- 靴を持つ
- マジックテープを剥がす
- 足の入り口を広げる
- つま先を入れる
- 靴の後ろのタブやリングを持つ
- かかとをぐっと押し入れる
- マジックテープを貼る
小分けに書くとこんなにもすることがあるのです。
モールステップで挑戦する場合、できそうな部分から挑戦します。
ぼんちょの場合は、③のマジックテープを剥がすところから④足の入り口を広げるまでは補助しました。

まずは⑤のつま先を入れたらOKにしました。
そこからその後の⑦かかとを入れる⑧マジックテープを貼るところまでが先にできるようになりました。
このように、スモールステップで取り組むときは手順の最初から頑張るのではなく、できそうなところから順番に「できた」を積み重ねていくのが鉄則です。
次に靴を脱ぐ手順です。
- 座る
- マジックテープを剥がす
- かかとを持つ
- 靴から足を抜く
丁寧に書くとこの手順です。ですが、実際にぼんちょがどうかというと、
座った後に
マジックテープは剥がさずかかとを持って足を抜く
ですね。
脱ぐという目標は達成できているのでこれで良しとしています。

「履く」時もマジックテープを剥がさずに履くことがよくあります・・・けど、履くのが最終目標なのでこれで良しとしています。
ちなみに靴を「履く」と「脱ぐ」。どちらから取り組むべきでしょう?
手順を見たら一目瞭然、「脱ぐ」の方が手順が少なく操作的にはハードルが低いのです。
ですが、ぼんちょの場合は、脱ぐ方が意識しづらかったです

外靴を脱がずに足を上げて上靴を履こうとしていて「あれれ・・・?」という感じでした。
なので、ぼんちょの場合は靴の着脱全体で見た時には一番最初にできるようになったことは「履く」の中の「つま先を入れる」ことでした。
こんな風に子どもによって、どこから取り組みやすいかも全然違いますのでお子さんに合った方法で練習してみてくださいね。
まとめ
今回は、知的障害や発達障害を含むお子さんが、自分で靴の着脱(脱ぎ履き)ができるようになるまでの環境設定のポイントや練習方法をブログにまとめした。
子どもが自分で靴を脱ぎ履きできるようにするためには、本人に合った靴や環境を用意する必要があります。
また、子どもが靴の着脱をする時の手順を細かく分けて、お子さんが取り組みやすいところからスモールステップで「できた」を積み重ねることが大事です。
今回紹介した内容は、実際に重度知的障害と診断されている「ぼんちょ」とその家族の実際の経験をもとに作成しています。
過去の我が家と同じように、子どもと靴の着脱の練習に取り組みたいけど難しいお子さんがいるご家庭に少しでも参考になることがあれば幸いです。
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最後まで読んでくださりありがとうございました!